市村さんに無理を言って農園視察に同行させてもらった。総勢12名の大所帯。車三台連なって祐徳稲荷神社に近い山奥にある藤井さんの農園を訪ねた。農繁期の忙しい時にも関わらず、藤井さんは長い時間を割いて僕らに話をしてくれた。農園は藤井さんの他に10名のスタッフが出入りしており(これは本当に凄いことだ)、大まかな農作業は人に任せ、この頃は独りで黙々と草取りをしていると言った。膝を突き殆ど四つん這いになって草を取る。そして何も考えずただ無心でひたすら草を取っているうちに、根の生え方が分かってくるのだという。「上に引っ張っても駄目なんです。雑草は真横に引っ張ると簡単に抜けるんです」。その話しを聞いて本当に感心してしまった。僕の日常生活には殆ど関係のない話だけど、何だか自然の摂理を説かれたような、些か敬虔な気持ちになるのだ。ただ頭の中で考えるのではなく、自然に耳を澄ませ、手を動かし、考える。智恵とはそんな無心の境地で発見する贈りものなのだ。


農業を極め、良いものづくりと経営がしっかりと成り立っている藤井さんの農園。


クロマニヨンの料理が何故美味しいのか。ただ、美味しいのではなく感動してしまう。
市村さんは、食材の背景を把握し、作る人(生産者)を尊敬し、そして、料理を供す者としてやるべきことをし、食べる人のことを考えている。普段、カウンター越しでしか話すことはなかったが、僕はこの日、厨房以外の市村さんの態度や哲学、そして、彼の中の美しいものに触れた。お陰でカウンターに出される料理をもっと深く味わうことが出来る。そう思うと自然に笑いが込み上げてきた。
帰りに食べたうどんが美味しかった。うどん屋さんではなく、祐徳稲荷神社の参道沿い「寿司政」で食べたうどんである。寿司屋でうどんというのが面白い。麺は大分 の「やせうま」に似た平打ち麺。讃岐うどんのようなコシがあるわけではないが噛み応えは十分だった。