長年、宗像で営んできた製麺所をクライアントである息子さんが代替わりするタイミングで、「宗像庵」から「山田製麺」にネーミングを変更することに。それに伴うロゴ制作と包装紙や名刺などのツール制作を行った。春には製麺所・うどん店の新装開店予定でとても楽しみ。
●ヒヤリング
津屋崎のうどん店(現在は宗像へ移転準備中)「こなみ」さんにてヒヤリング…の前に、うどんを食す笑 この日は、けいらんうどん。ちかちゃんはスパイスの効いたカレーうどんを。ナイスチョイス。案件内容にもよるが、ヒアリングでは、だいたい将来的なビジョンとか、どう見られたいとか、方針や基本的な考え方などを聞きたくて、思いつくままランダムに聞いていきます。雑談や世間話の中にも、クライアントの考え方や個性など、デザインに活かせるヒントや大切な要素が多分に含まれていることがあります。また、プロジェクトの予算やスケジュールについても、この時にはっきり聞いて、最大限にできることを考えていきます。具体的な予算が決まっていない場合…大抵の場合は、グラフィックデザインの相場が全く想像つかないのが原因…は、ヒヤリングを元に、後日、見積もりを算出します。そこから、実現に向けて、できること・できないことなど色々と詰めていきます。だから、まずはご相談を 笑山田製麺さんの場合は、ご主人と奥様、お二人にあれこれ質問。トンマナ(トーン&マナー)だったり、事業の考え方だったり。美智子さん(奥様)が、山田さんみたいなロゴ、と言ったのが印象的で、抽象的なんだけど、とてもヒントになるワードが出てきたりして、ヒヤリングはとても楽しいプロセスです。「山田さんみたいな感じで、真面目っぽいロゴ」というのが、大まかな方向性として出てきました。
●デザイン作業 ①(イメージ)
話を聞いていて頭の片隅にあったのは、隷書体とか古印体という印鑑でよく見かける書体。隷書体は漢方薬局とかでも見かけますかね、あるいは、歴史の古い酒蔵や老舗味噌醤油屋さんの看板、新聞のロゴにもよく使われていて、歴史・信頼、格式が高く、実直な印象を持つ書体です。二代目へと「代替わり」することや美智子さんが「真面目」と噛み砕いて表現した言葉から発想して、隷書や古印体の雰囲気を参考にロゴができないかなと考えました。
●デザイン作業 ②(資料集め)
まだ、今のようにネット上のサービスが充実していない頃は、大型の本屋さん(紀伊国屋書店など)に資料を探しに行っていましたが、現在は何と言ってもPinterestや画像検索で済むようになりました。手持ちの資料では限界があるし、とても便利な時代になりました。僕の場合、上記の画像のような、イメージする画像をひたすら探して、頭の中で書体の特徴を観察してイメージトレーニングのように無数の画像を脳内に取り込む感じ。ロゴのアイディアのためにスケッチを沢山描くということは、あまりありません。しかし、これも時と場合によるので、なんとも言えないのですが。。
●デザイン作業 ③(デザイン)
参考になる画像を眺めていて、なんとなくイメトレできたなと感じたので、とりあえず手持ちの書体を打ち出して、ガイドライン(参考にするアタリ)にしてみました(写真:上)。今回は隷書体がイメージだったので、白州隷書というフォントをタテ・ヨコで打ち出してみました。いい書体ではあるけれど、どこか不格好なところや気に入らないところもあって…やっぱり自分で作ったヤツじゃないとな….と再確認するわけです。とりあえずエレメントを作ってみる。(写真:中)エレメントと呼んでいるのは、文字を構成する「線」のことです(一般にそう呼ぶかどうかはわかりません)。「選択」して青いラインが出るようにスナップショットを撮ってみたので、組み合わせ方がよくわかると思います。なんとなく仮組みした状態(写真:下)。
山田製麺(タテ組)の横に「田」を置いているのは、ヨコ組した時の位置を決めるためです。あと、ここでのポイントとしては、白州隷書体の「山」の字は真ん中の△の部分が広すぎて、なんだかマヌケだな、と思っていて、僕は「人」という文字がわかるように描いてます。それと、先ほど述べましたが、既存フォントを打ち出して、ガイドラインにするというのは常に使う手法ではありません(文字の骨格など、大変参考になる手法です)。しかし、この案件はそうやってみた、ということです。いきなりエレメントを作って組み立てる時もあります(後日、アップすると思いますが「時々可否」の場合は、スケッチを眺めながらエレメントを組み立てました)。
●デザイン作業 ③(デザイン「ロゴマーク」)
地に足をつけて、夢を追いかけて欲しい。という個人的な願いから「山」マークをエベレスト級ではなく身近な里山のような形にしました。個人的な願いを形にするというのは割とよくあることです。これもいきなりペンツールで線を引きます。山のラフは一切描かなかったので、ありません。頭の中に明確に形があったので、それをなぞる感じ。パスをアウトライン化して27インチモニターいっぱいいっぱいに拡大しながら細かく調整していきます。
ロゴの方向性を決めてイラレで大ラフを作るまでは、年々早くなっているように感じます。その代わりデザインの微調整=詰めの作業にとても時間をかけます。入稿ギリギリまで詰めていることも多々あります。人が見てもわからないレベルなのですが、気になると手をつけずにはいられない質なので延々やってしまいます。必ず気持ちのいいポイントがあるので、見つけるまでは諦めません 苦笑。詰めていけばいくほどデザインの精度が格段に上がるのは確かです。
二枚目の画像は、5mmの升目を作って、比率を合わせてロゴを重ねてみた図です。ぴったりと升目に合いました。升目に合わせたわけじゃなく、デザインを詰めることで、黄金率(気持ちのいいポイント)に近づいていくということを改めて感じます。全般的に(あくまでも、の話です)、これは僕のディレクションの特徴でもあるのですが…目指しているデザイン、トーンは「アノニマス」です。
僕が作ったということが前面に出るものではなく、誰かが作ったもの。あるいは、もうすでに存在していたもの。という印象に全力を尽くして近づきたい。そう考えています。