その人に初めて会ったのは今年の一月だった。
天気予報が四〇年振りの大寒波が西日本を直撃すると伝えていたとおり、
こんこんと雪が降るのをカフェの窓際の席から一緒に眺めた。
そして熊本市内のアトリエに伺ったのが三月中頃。
生憎の雨で、川内倫子の素晴らしい展示を
観た後だったということもあり心がザワザワしていた。
僕も千歌ちゃんも以前から知っていたブランドSARAXJIJI(サラジジ)の野田さんの話は、
長時間に及ぶインタビューの中でもぶれることがなく、筋が一本通っていて心地よかった。
四月に入って、そろそろ仕事もひと段落ついてきたし、
頭の整理を始めようかと考えていた矢先。熊本で大変なことが起こった。
熊本は僕らが十年ほど前まで住んでいた場所で、たくさんの知人友人がいて、
その安否が気になっていた。もちろん野田さんのことも。
幸いにもSNSで無事であることが分かった。落ち着くまでそっとしておこう。
プロジェクトは恐らく年内は難しいだろう。
ゆっくり取り掛かれば良いし、野田さんもそれどころじゃないはずだ。
そんなことを考えていた。とにかく大事がなくて良かった。
それが昨日、D&DEPARTMENT FUKUOKAでのPERMANENTのワークショップ前のことだ。
千歌ちゃんの携帯に野田さんからの連絡が入った。
僕はてっきりプロジェクトを延期しようという内容だろうと考えていたら、
電話を終えた千歌ちゃんがきらきらした表情で僕に
「経済を止めてはいけない。予定通り進めてください」。
野田さんがそう言ったのだと教えてくれた。
地震以来、気分がすぐれない日がずっと続いていたから、逆に僕らのほうが元気づけられた。
そして、僕らが、なぜSARAXJIJIが好きなのかハッキリとわかった気がした。
あの人の服を着たいと思う。
細くて小さな身体から創り出されるタフでしなやかな服を。