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ASAHIKAWA DIARY 1

2020. 11. 04. Wed.

10月後半の1週間は北海道(旭川)出張だった。
空港の近くでレンタカーを借りて、美瑛→富良野→東川→旭川市内を移動した。出発前に悩んだのが現地での“最適な服装”だ。大牟田は23°/15°で、北海道は最高気温15°程度、最低気温3°。温かい土地に暮らしている僕らにとって、気温差10°というのはなかなかイメージしにくく、結局、大きなスーツケースに洋服を詰め込んだ。

当日は早朝4時に起床。重いスーツケースを引っ張って大牟田駅前バス停まで徒歩。高速バスに乗り福岡空港へ。福岡空港から羽田へ行き、羽田からAIRDOで旭川空港に着いたのが、13時過ぎ。北海道は“遠い国”だった。

羽田でホットドッグをつまんでいたからか、それほど空腹でもなかったので一先ずレンタカーを借りて美瑛町へ向かった。
大牟田を出るときから天気が芳しく無く、それが北上するに連れて、ますます空模様は愚図ついた。僕らは自他共に認める?晴れ男、晴れ女である。初めての北海道で雨に見舞われるとは…。と少々悲観したけれど、大雨で動けないという程でもなかったし、まぁ長い人生、こんなこともあるさとすぐに気持ちを切り替えて曇天の大自然を大いに楽しむことにした。

さて僕はこの地に何を期待していたか。それは言うまでもなく、圧倒されるような大自然の姿を見ることだ。素晴らしい景色が現れると車を停めカメラを持ち出す。再び車を走らせるとまたすぐに絶景が広がって、いてもたってもいられなくなる。まったく!北海道初心者はこれだから困る笑。一週間ほど滞在し目を慣れさせてからでないと、こんな調子では目的地に着くのは何時になることか。

車を走らせながら僕は、時々、J・ケルアックの『路上』のことを思った。まだ読んだことはないのだけれど、プロットは何となく知っている。

「路上」は著者のJ・ケルアックが1940年代後半~50年代初頭にかけてアメリカ大陸を横断(縦断)した実体験がもとに書かれたクロスカントリー・オデッセイ(国土を横断する長大な抒情詩的作品)。
ざっとアメリカ大陸横断(往復)が3回、メキシコまで突き抜けていった縦断(往復)が1回。これを合計すると実に3万キロ強!

地球1周が約4万キロだから、その4分の3の距離を、飛行機を使わず、バスとヒッチハイクだけで旅して回った。
作中の広大なアメリカ大陸に点在する大自然に対する畏怖に満ちた語り口は、凄まじいものがある。その中でケルアックはある時は宗教的な感動を覚え、大地と宇宙と一体化するような体験もしていく…。

分厚い本で翻訳が古かったせいもあり、とっつきにくい印象を持って、生憎、読まずにきたけど、今なら多分『路上』の主人公の気持ちが理解できるかもしれない、と美瑛の美しい景色が広がる路上でハンドルを握りしめて、そんな事を考えていた。

北西の丘展望公園→パッチワークの路を通って→セブンスターの樹→ケンとメリーの木を見た頃、強風と小雨に濡れてすっかり体が冷えてしまいようやく空腹を感じた。珍しく千歌ちゃんがどこかでラーメンを食べようと言うので、近くで旭川ラーメンが食べられる店を検索した。ところが、まだ15時だというのにどの店も閉まっている。何軒かフラレてやっとありついたのが写真のラーメン。僕らが入るやいなや、女性店主はいそいそと暖簾を仕舞い込んだ。知らなかったが北海道のラーメン屋さんの多くが11時〜15時までの営業で、彼女は、たまたま暖簾を仕舞い忘れていたと推測される。

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